家を売却したいと思った時に、まずは不動産会社に相談すると思います。
しかし、不動産会社に任せっきりにすると思ったような金額で売れなかったり、時間がかかってしまったりする可能性があります。
自分でも事前にやれることはたくさんあるので、査定前にした方がいい準備や高く査定してもらうコツを分かりやすく解説します。
家を査定する前の準備
家の掃除をしておく
不動産売買を何回も経験している人は稀なので、なかには家の片付けをした方が査定価格が上がると思っている人も多いかと思います。
しかし、実際は査定時に片付けをしても査定価格に与える影響は大きくありません。
理由は、不動産会社は引渡し時の何もない状態を前提に査定するからです。
ただし、購入希望者から家のなかを見たいという内覧の希望があった際は片付けをしておくべきです。
購入希望者の多くは、中古物件を見慣れていない一般人ですので、片付けの状況によって印象が左右されてしまいます。
ちょっとしたことで購入してもらえるかが決まることもあるので、購入希望者に良い印象を持ってもらうことは大切です。
特に、念入りに掃除をした方がいい場所は、玄関、リビング、水回り、バルコニーです。
玄関はその物件の第一印象が決まることが多く、整理整頓がきちんとされていると好印象になります。
また、水回りに水垢があったり、キッチンが油で汚れているとその物件の価値が下がってしまうので注意が必要です。
もし、お金をかけてハウスクリーニングをする場合は、査定前よりも内覧前にすることをおすすめします。
必要書類の有無を確認・準備しておく
家の売却時には、買主へ引き渡す書類が必要です。
書類がないと売却ができないわけではないですが、不動産会社から書類の有無を確認されますので、事前に整理しておいて、ない場合はないと伝えましょう。
戸建売却の際に必要な書類
- 登記済権利証または登記識別情報
- 土地の実測図
- 土地の境界が確認出来る資料
- 越境等があればその覚書
- 建物の設計図面
- 建築確認申請書および確認済証
- 検査済証
マンション売却の際に必要な書類
- 登記済権利証または登記識別情報
- 管理規約
- 使用細則
- 分譲地のパンフレット等
住宅ローンの確認
住宅ローンが残っている人は、現時点の住宅ローン残高の確認が必要です。
住宅ローン利用中には、抵当権という銀行が家を担保としている権利が付いています。
抵当権が付いたまま家を売却することは不可能ではありませんが、抵当権が外れていない物件の購入には買主側のリスクが伴います。
リスクを負ってまで購入する人はいませんので、買主は売主の抵当権を外れていることを条件に購入するのが一般的です。
抵当権の抹消には、住宅ローンを完済することが必要です。
もし、売却額が住宅ローン残高を下回る場合は自己資金を出さなければいけなくなります。
それをふまえて売却価格を決めることになるので、住宅ローン残高を正しく把握しておきましょう。
借りている金融機関に申し出ることで、残高証明書を発行してくれます。
土地の利用履歴を把握しておく
売る物件が戸建の場合は、利用履歴を確認しておくことが重要です。
土壌汚染や地中障害物のような隠れた瑕疵は、売主が責任を負うのが原則です。
瑕疵があったことによる契約不適合責任を問われれば、損害賠償請求や契約解除になる場合もあります。
仮に、土壌汚染の可能性が少しでもあるときには、事前にきちんとした調査をすることが大切です。
不動産会社に利用履歴を聞かれたら、知っている範囲で正直に答えるようにしましょう。
また、境界が未確定の場合は、引渡しまでに境界の確定が必要ですので、査定時にその旨を伝えるようにしましょう。
家の修繕履歴を確認しておく
修繕履歴とは、シロアリ予防や外壁塗装など定期的に行った維持修繕を指します。
マンションであれば、修繕履歴は管理組合が保管しています。
家の状態と歴史がひと目に分かるようにしておくと、売却時のアピールポイントになるとともに、買主にとっては安心材料になります。
戸建ての場合は、住宅メーカーが行った定期点検のチェックシートなども保管しておいた方がいいです。
売却時期や売却の希望価格を決めておく
家の査定時には、不動産会社に売主の希望をきちんと伝えることが重要です。
重要な希望事項としては、売却時期と価格です。
売却には販売期間3カ月と契約から引き渡しまでの1カ月で、少なくても4カ月程度かかります。
急いで売却を進める必要がある場合は、その旨をきちんと不動産会社に伝えるようにしましょう。
価格については、必ずしも希望通りになるとは限りませんが、とりあえず希望だけは伝えるようにしましょう。
特に希望がない場合でも、なるべく高く売ってほしいと伝えるのが良いです。
家の査定を上手に進めるコツ
信頼できる不動産会社に依頼する
査定依頼は信頼できる不動産会社に依頼することがとても重要です。
悪質な不動産会社だと査定の信頼性も低くなってしまいます。
大手不動産会社だけではなく、地元不動産など複数の不動産会社に相談してみることをおすすめします。
地元不動産会社であれば、人気の学区やスーパーなど地域の事情に精通していることが多く、社内ルールも融通がきくので柔軟性が高い傾向があります。
また、不動産価格の査定方法には訪問査定と机上査定の2種類があります。
電話やメールで簡単に依頼できる机上査定よりも、訪問査定をしてもらった方が、データだけでは分からない物件のおすすめポイントをプロの視点で見つけることができます。
不動産会社によって査定額が異なるのはよくあることです。
査定額の根拠を聞いて、明確な理由があれば信頼できる不動産会社だと言えます。
査定結果の理由が明確だと、実際に売却を進めても査定価格と成約価格に大きな乖離が起こることが少なくなります。
逆に、査定結果の根拠が薄いと、想定よりも安い価格で売却してしまうこともあります。
査定価格の根拠を聞く際には築年数、間取り、土地の相場感、家の状態、近隣施設の有無という5つの視点で査定額の根拠を聞くと良いでしょう。
相場の確認
不動産会社に査定価格を聞いた上で、最終的に売り出し価格を決めるのは売主自身です。
その為には、判断基準となる相場価格を掴んでおく必要があります。
不動産売却の相場は自分である程度、調べることができます。
売却相場を調べられるサイトには以下のものがあります。
・レインズマーケット・インフォメーション
不動産会社が仲介で不動産を売却する場合には、レインズマーケット・インフォメーションへの登録が義務付けられています。
多くの過去の売却実績が登録されており、類似物件に絞り込んで相場を調べることができます。
・土地情報総合システム
国土交通省が運営する土地情報システムでは、不動産の取引価格や地価公示を検索することができるサイトです。
類似の取引がない場合でも、マップに記載されている公示地価から、おおよその相場を知ることができます。
不動産の売却事例が少ない地方などに住んでいる人におすすめです。
・SUUMOなどの民間サイト
購入希望者向けのページを見ることで、現在売り出し中の不動産の価格をリアルタイムで見ることができます。
ただし、実際に売却された価格ではないことには注意が必要です。
しかし、上記のサイトを利用しても、必ずしも参考になるとは限らず、一般の人にとって不動産の相場を正しく把握するのは困難です。
査定時に何もわからないフリをして、さり気なく不動産会社に相場を聞くのがおすすめです。
相場情報を集めながら、査定を依頼するのが良いでしょう。
その点からも、複数の不動産会社から話しを聞いたり、たくさんの売買物件を取り扱っている不動産会社に相談した方がより相場情報を集めやすくなります。
売却時期や希望価格を伝える
信頼できる不動産会社が見つかったら、売却時期や希望価格を伝えます。
一般的に、売却時期にある程度余裕をもった方が有利に交渉が進むことが多いです。
理由は、不動産会社がネットやチラシで買主を集客するにはある程度の時間が必要だからです。
広告を広く浸透させる為には、エリアやターゲットを変えて、複数回実施した方が効果が得られます。
ちなみに、広告を出す度に不動産会社から費用を請求されるわけではありませんので安心してください。
希望価格は近隣の相場や住宅ローンの残債などを加味して決めますが、曖昧にせずにはっきりと不動産会社に伝えましょう。
希望価格が相場より明らかに高い場合は、不動産会社からのアドバイスを聞いて、よく相談する必要があります。
後述のセールスポイント次第では、相場より高く売れる可能性もありますが、買主の反応がなかったら、値下げすることも必要になる場合があります。
また、売却を急いでるなどの事情がある場合は、相場より安い価格にした方が良いでしょう。
セールスポイントを伝える
価格査定に影響する為、セールスポイントがある場合は不動産会社にきちんと伝えましょう。
特に、建物に関しては、第三者による公的な証明書を取得している場合は価値があるので、アピールした方がいいです。
新耐震基準への適合や住宅性能評価の取得等は、不動産会社に伝えないと分からない内容です。
このような良い内容は、広告に載せることが出来るため、買主に対する効果は抜群です。
セールスポイントとしてなり得る内容には以下のものがあります。
- 建物状況調査(インスペクション)の報告書
- 既存住宅に係る建設住宅性能評価書
- 耐震診断結果報告書
- 瑕疵担保保険の保険付保証明書
- 構造計算書の写し
- 耐震基準適合証明書の写し
- 住宅耐震改修証明書の写し
- 増改築時工事証明書の写し
- 固定資産税減額証明書の写し
新耐震基準を満たしているかは、住宅ローン控除の適用の可否、不動産所得税や登録免許税の軽減措置の有無など買主にとって大きく関わります。
忘れずに伝えるようにしましょう。
売却後のトラブルを避けるためにするべきこと
瑕疵がある場合は正直に伝える
瑕疵は、通常有すべき品質を欠くことを指します。
分かりやすい瑕疵は、雨漏りやシロアリなどですが、瑕疵には大まかに4種類存在します。
物理的瑕疵
- 建物の雨漏りがある。
- シロアリの発生がある。
- 家の傾きがある。
- 土壌汚染や地中障害物がある。
法律的瑕疵
- 法令等の制限により、建て替えようとした場合に建築許可が下りない。(再建築できない)
- セットバックが必要で、建て替えようとした場合に制限がある。
- 道路拡張などの予定があり、将来、立ち退きが必要になる場合がある。
心理的瑕疵
過去に自殺や殺人事件、火災などがあり、心理面において住み心地の良さを欠くもの
環境的瑕疵
近隣からの騒音、振動、異臭がある。日当たりが悪い。近くに反社会的組織の事務所があるなど安全で快適な生活が害される恐れがあるもの。
法律的瑕疵に関しては、不動産会社が調べてくれることが多いですが、その他のことに関しては買主に渡す付帯設備表と告知書(物件状況確認書)に漏れなく記入しましょう。
売主は、売却後、契約不適合責任を負います。
契約不適合責任が問われるのは、契約内容と異なるものを売却したときです。
契約内容は、多くの場合は、売買契約書に記載します。
売買契約書に売却する不動産の状況、契約の条件をしっかり記載することで責任を問われるリスクを減らすことができます。
査定価格を少しでも高くしようと思って瑕疵を正直に伝えずに、後から責任を追及されればもっと大きな損害を被ることになります。
瑕疵はきちんと伝えるべきものだと理解しておきましょう。
まとめ
不動産会社に査定を依頼する際に特に重要なことは「信頼できる住宅会社に依頼する」、「相場を確認する」、「伝えるべきことをきちんと伝える」ことです。
査定の準備では、必要な書類の有無、土地の利用履歴や建物の修繕履歴を確認しておくと、スムーズに売却が進められます。
また、住宅ローン残高等を考慮して、あらかじめ売却時期や希望価格を設定しておきます。
瑕疵がある場合は、隠さずに正直に伝えましょう。
査定前の準備や注意点をきちんと実行して、適正な査定が行われ、販売活動がスムーズに運べば、物件を早く、高く売却できる結果をもたらします。
この記事を参考にして納得のできる不動産売却をしてみてください。