住宅ローンの支払いが滞り、今後の支払いの見込みが立たない場合に、検討するのが任意売却です。この記事では、主に任意売却のメリットデメリットなどを中心に解説していきます。
任意売却とは
任意売却は、住宅ローン滞納時に行う売却方法です。任意売却となる条件は、住宅ローンの滞納、売却してもローンの残債を下回る、自己資金でも完済できない状態、です。つまり、物件を売り渡す時に住宅ローンがある場合には、売却資金等で完済し抵当権を抹消しなければなりません。この抵当権が抹消できない状態で滞納を続けていると、やがて抵当権が実行され競売となるのですが、その競売となる一歩手前の売却方法であるのが任意売却です。
任意売却に踏み切る前に行いたいこと
ここでは、まず任意売却を検討する前に行っておきたいことを2つ解説します。
借り換えを検討する
まずは、借り換えです。借り換えすることで、金利が低くなり支払いができる水準になるのであれば、まずはこちらを検討してみます。最近は、低金利状態が長らく続いていますが、ひと昔前の金利が高い状態で借り続けているケースもあります。現在、大手金融機関では借り換えキャンペーンなどを行い、借り換えに対しての敷居を低くし積極的に取り込むような姿勢もあるので、まずは借り換えを相談してみるのがよいでしょう。
金融機関に支払い猶予の交渉
借り換えが厳しいようであれば、住宅ローンを借りている金融機関に、支払いの猶予ができないかを交渉してみるのもよいでしょう。この場合、家庭の収入状況や預貯金など、経済的な状況などを伝え、支払期間を延長する相談をします。
任意売却と競売の違いとは
任意売却と競売には違いがあります。その違いについて解説します。
まず、任意売却は不動産会社が行いますが競売は裁判所が行います。任意売却は売却活動等について売主は関与できますが、競売は一切関与できず裁判所が強制的に行います。また一番の違いは売却価格で、任意売却であれば相場並みで売却できる可能性がありますが、競売は相場の70%~80%での売却が殆どです。したがって、売却後に残る住宅ローンの金額も大きく異なってきます。
最後に、任意売却は不動産会社が介しての通常売却となるので、売却している事実が周囲に漏れたとしても心象は悪くありません。しかし、競売となると裁判所の執行官が下見に来たり、競売物件を狙う不動産会社などが近所を調査します。よって、近所への心象は最悪で、競売中との情報も公開され、プライバシーが守られないこともあります。
任意売却のメリット
ここからは、任意売却のメリットについて解説していきます。
売却後に残債は残るが抵当権は抹消できる
まず、売却完了後にローン残債は残るが、抵当権は抹消できます。これには、もちろん保証会社への交渉が必要となります。尚、残ったローンについて返済義務が帳消しになるのではなく、返済期間を猶予するなど支払いができる水準までローン金額を落とし、完済までローン返済は継続します。
抵当権とは h4
抵当権とは、担保物件の一つで担保を取るものの占有権は持たないが、返済が滞ったときは売却し弁済を受ける権利があるものです。つまり、住宅ローンを滞納し返済が滞った場合には、保証会社は抵当権の行使(競売の申し立て)をすることで、弁済を受けることができるのです。住宅ローンで購入したマイホームを売却する場合は、抵当権を抹消して引き渡します(抵当権が付いたままでも引き渡しできるが、買主にとって都合が悪いので通常はない)。
市場価格に近い価格や競売より高く売却できる
任意売却は、市場価格に近い価格で売却ができるので、競売より高く売却できる可能性があります。これにより、競売時よりもローン残債が少なくなり、また保証会社からは一括返済を求められず、返済期間猶予で支払いを継続できるメリットがあります。尚、競売となった場合、売却完了後のローン残債については一括での返済が求められます。しかし、そもそも一括で返済できる自己資金を持ち合わせているケースはほとんどありません。したがって、多くの場合自己破産を申請し、返済義務が免除されることが一般的です。尚、自己破産となると個人信用情報に残り、住宅ローンやカードでの借り入れはできなくなります。
不動産会社で売却できる
不動産会社で売却できます。しかし、任意売却は通常取引時に必要となる宅建業法や民法の他に、弁護士法・民事執行法・債権回収法などの法律に関する知識も必要です。更に、不動産会社の経験不足や知識不足でトラブルになることもあります。例えば、物件を放置していて、いつの間にか競売になってしまった、売却価格を金融機関と相談しなかったなどです。任意売却には専門的な知識と多くの実績、また担当者の高いスキルが必要です。広島県内であれば、任意売却を専門的に行っている広島不動産がおすすめです。
自分の意思で売却できる
任意売却は、売却活動に自分の意思を反映できます。売却できる期間は限られているので、期限が差し迫っていれば販売価格を安くしたり、期間に余裕があれば相場並みで販売したりと、不動産会社に意見しながら進めることも可能です。したがって、ある程度は自身の考えに基づいて動くことができるのもメリットです。
お金の持ち出しはない
任意売却に自己資金の持ち出しはありません。売却資金から仲介手数料や書類等の取得で掛かった必要経費を差し引いて、残りの分を住宅ローン返済に回すことができます。また、交渉によっては引っ越し代を捻出してくれることもあるのです。
情報が周囲に漏れにくい
競売となると「競売情報」として世間一般に公開されてしまうので、近所への心象が悪くプライバシー性もありません。しかし、任意売却は一見通常売却と一緒です。売却情報は広告等で確認できますが、競売ではないので心象は悪くなく、一般的な売却とみなされ色眼鏡的に見られることはないでしょう。
売却後に残った残債に猶予期間が適用される
任意売却では、必ず売却後に住宅ローンが残りますが、残った残債には返済猶予期間をつける交渉を行い、返済額の見直しをすることができます。これにより、現状支払える無理のないローン返済額にできます。
差し押さえ物件でもできる
固定資産税など税金を滞納すると、行政等により差し押さえをされることがあります。しかし、任意売却は差し押さえ物件でも行うことができます。この場合は、行政機関に任意売却の同意を得ることが必要です。
売却後に住み続けることもできる
任意売却になってしまったものの、終の棲家として考えておりこの土地を離れたくないと思っている人も多いでしょう。このような場合、買主が了承すればリースバックという方式で住み続けることも可能です。リースバックとは、住んでいる家を売却し、売却後は買主から賃貸することで、もとの住まいに住み続けられる制度です。当然に、賃貸住宅となるので毎月決まった家賃を支払います。毎月の賃料は、住宅の築年数や土地の立地条件で変わりますが、一般的には売却価格を基準にし、その地域の賃料相場をもとに算出します。周辺相場より高くならないことが注意点です。
任意売却のデメリット
ここからは、任意売却のデメリットについて解説します。
共有者や連帯保証人の同意が必要
まず、共有者や連帯保証人など持ち分を要する人全員に、任意売却の同意を得る必要があります。通常売却時と同様に、勝手に売却することはできません。
金融機関が任意売却に同意しないとできない
任意売却は、金融機関が同意しないとできません。金融機関によっては、任意売却自体を認めないところもあります。また、金融機関が同意するのは、ローンが残っていても抵当権を抹消することと、査定価格と販売価格の提案に関する事項です。
売却できる期間は限られる
任意売却の期間は、限られています。期限は、競売開札日の前日で、それまでに任意売却が完了しなければ、無条件にて競売に移っていきます。売却できる期間に限りがあるので、任意売却するなら早めに動く必要があります。
必ず売れる、若しくは高く売れるとは限らない
通常売却同様、必ず売れる保証はありません。買い手は、広告等を行い一般消費者から探す形になるので、集客次第では成約できないこともあります。また、競売より高く売れる保証もありません。物件の立地や築年数等により、競売時より高く売れない可能性もあるのです。
住宅ローンの残債は残る
任意売却が完了しても住宅ローンは必ず残ります。残った住宅ローンの返済義務はあるので完済する必要があります。
任意売却物件を購入するメリット
ここからは、任意売却中の物件を購入するメリットについて解説します。
周辺相場より安く購入できる
任意売却物件は、周辺相場より安く購入できることもあるため、一般的な中古物件よりお得なケースがあります。競売と違い、建物内等を確認して購入できます。
住宅ローンは組める
任意売却物件では、住宅ローンを組むことができます。尚、売買後、引き渡しまでの期間が短いのが要注意です。しかし、最近のローンの事前審査はネット上でも簡単に行えるので、希望通りの物件であれば早めに住宅ローンの審査に動くのがよいでしょう。
入居までの計画が立てやすい
任意売却物件は、金融機関と不動産会社が売買から引き渡しまで綿密に打ち合わせするので、購入者は入居までのスケジュールが立てやすくなります。
リースバック利用で資産運用しやすい
任意売却は、売主の経済的都合で売却するケースが殆どなので、売却して手放すのを本意と思っていないこともあります。特に、高齢者等の場合、終の棲家との考え方があれば引っ越しを望まないこともあるでしょう。そこで、売主はリースバックという制度を使うことができます。リースバックとは、買主に賃料を払い売却した自宅にそのまま住み続けることです。もちろん、買主の同意が必要ですが、買主は購入した物件が賃貸目的であれば、安定的に賃料収入が得られますし、売主は引っ越しすることなく住み続けることができるメリットがあります。
任意売却物件を購入するデメリット
次に、任意売却物件を購入するデメリットについて解説します。
価格交渉は難しい h3
まず、価格交渉は難しいです。そもそも、住宅ローン滞納分を回収するために売却しており、販売金額についても金融機関に同意を得ています。仮に、価格交渉する場合、金融機関への交渉は難航すると思われます。
契約不適合責任が免責されるケースが多い
任意売却は、経済的理由等で売却しているケースが殆どで、仮に契約不適合を問われても売主が補償しきれない可能性が高くなります。よって、契約不適合は特約で免責となるケースがあります。したがって、買主は購入前に住宅診断(インスペクション)を実施し、専門家の意見を受けるのがよいでしょう。
物件の状態が良くない場合が多い
任意売却物件は、売主が建物自体の管理を疎かにしているケースも多いです。特に、一戸建て等の場合は要注意です。床下、壁の中、屋根裏など、腐食やシロアリなどで傷みが激しい場合もあります。売買前に交付される、物件状況報告書などをよく確認します。
管理費や修繕費の負担がある
マンションの場合、売主が管理費や修繕費を滞納しているケースもあります。滞納している金銭は、新しい買主が引き継ぐことになるので要注意です。尚、滞納がある場合、これらの事項は契約前の重要事項説明書に記載されます。
一般的な物件の購入より時間が掛かる
任意売却物件は、通常の不動産売買よりも時間が掛かるケースが多いです。理由は、売主や不動産会社だけではなく、債権者(保証会社等)の承諾も必要だからです。任意売却は住宅ローンの返済が目的のため、金融機関による条件面などのチェックがあります。任意売却物件を購入する際は早めに対応することを心がけましょう。
まとめ
住宅ローンを滞納したら、早めの任意売却を検討するべきで、なんとしても競売は避けた方が良いでしょう。尚、任意売却物件を売る買う双方に、メリットデメリットは当然にあります。それらをしっかりと理解し、任意売却物件の売買に挑む必要があります。また、任意売却をサポートする不動産会社の力も、取引がスムーズにいく要因になるので、不動産会社選びも慎重に行う必要があります。尚、広島県内での任意売却は広島不動産にお任せください。