住宅ローンの返済に行き詰ったら、まずは金融機関に相談し、返済期間の猶予など相談してみましょう。それでも、解決しない場合に「任意売却」の検討となります。「任意売却」は、一見聞いたことありそうですが、言葉だけでは想像しにくいものです。また、一般的に「競売」は聞き馴染みがあるのですが、「任意売却」と何が違うのでしょうか?今回は、この「任意売却」について、また「競売」との違いを解説していきます。
任意売却とは何か
ここでは、まず「任意売却」について詳しく解説していきます。
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンの残債がある状態で自宅を売却しても、売却額がローン残額を下回り、且つその下回った分を自己資金等で補填できない状態のときに検討する売却方法です。任意売却は、通常住宅ローン滞納時に行うもので、競売の一歩前の売却方法となり、メリットも多くあります。
住宅ローンは3か月程度滞納すると、金融機関から支払い催促を目的とした督促状が届き、3か月を超えてしまうと金融事故情報として信用情報に掲載されます。また「期限の利益喪失」という名目で、保証会社が金融機関への代位弁済にて一括返済を行います。しかし、住宅ローンの滞納が消えるわけではなく、その後6か月目程度を目途に保証会社が、代位弁済の通知を行い、その通知を放置していると保証会社は競売の申し立てを行います。この競売開始の目安は、およそ住宅ローン滞納から12か月後となるので、概ね住宅ローン滞納3か月~12カ月まで(競売が始まるまで)が任意売却できる期間となります。因みに、固定資産税などの税金を滞納すると、行政による差し押さえも入ります。尚、この差し押さえ中にも任意売却は可能です。
任意売却となる条件
任意売却となる条件について、先述にもありましたが改めて挙げてみます。
・住宅ローンの滞納が3か月以上続く
・売却額が住宅ローンの残債を下回る
・自己資金等での住宅ローンの完済もできない
不動産売却時に住宅ローンの残債が残っている場合には、抵当権を抹消する必要があります。抵当権とは、住宅ローンの滞納が続き抵当権者(保証会社等)が、債務者の住宅を売却し債権(住宅ローンの残債)を回収することをいいます。仮に、抵当権がついたまま引き渡すと買主には不都合であるので、通常は抵当権を抹消し引き渡しを行います。抵当権は一般的に、住宅ローンを完済し抵当権抹消登記を行うことで、抹消することができるのです。つまり、自宅を売却しても付帯している抵当権を抹消できない場合に、任意売却という選択肢が出てきます。
任意売却の依頼先
任意売却を扱う、不動産会社に依頼できます。つまり、街の不動産屋さんで任意売却を行っていれば依頼できます。しかし、任意売却は、専門性の高い売却方法であり、不動産会社の任意売却に対する経験や実績が重要になります。
任意売却する相手は
任意売却の売却方法は通常売却と変わりはなく、一般消費者が主な買主になります。また、市場よりも安く供給されることもあるので、買取り再販を担う不動産業者の場合もあります。
任意売却を回避する方法
・既存ローンの借り換えをする
・既存ローンの融資先に返済期間猶予等の救済措置を求める
まずは、既存住宅ローンの借り換えを模索します。現在の住宅ローン金利は1%切るのが当たり前になっていますが、15年以上前に住宅ローンを借り入れ、借り換えをしないまま高い金利で返済を行っているケースが該当します。金利の安い銀行に借り換えができれば、返済額を抑えられ任意売却を回避できる可能性もあります。尚、この場合保証料や手数料など、まとまった資金が必要になるので要注意です。
次に、借り換えが現実的に難しい場合には、既存ローンの融資先に返済期間の猶予ができないか交渉します。金融機関は、抵当権の実行で競売を行うと、市場価格より安い金額での売却となるので、債権を全て回収できない可能性が高くなります。したがって、救済措置として金融機関が返済方法の見直し(返済期間の猶予など)に応じて貰えるのであれば、任意売却が回避できる可能性があります。救済措置が受けられるかについては、金融機関により、また個別の状況にもよるのでまずは相談してみるのがよいでしょう。
任意売却を行うためにすること
ここからは、任意売却を行うために事前に行うことについて解説します。
金融機関との交渉
まずは、住宅ローンを借りている金融機関に任意売却の同意を得ます。任意売却は、物件が売却できると売却資金を住宅ローンの残債に充てることになります。しかし、売却資金より住宅ローンの残債が上回り且つ自己資金でも完済できない状態が任意売却です。したがって、残った住宅ローンを無担保状態で返済を進めていくこと、また抵当権を抹消すること、まずこの2点の同意が必要です。その他に、売却価格についても同意を得る必要があります。債務者としては少しでも高く売りたいと思いますが、現実的に早期に売却できる金額でないと任意売却を行う意味がありません。査定金額は信憑性のあるもので、売却の可能性が高い金額である必要があります。以上の同意を、金融機関に取り付けるのに重要なのが不動産会社です。不動産会社には、販売のノウハウの他に、金融機関との交渉ノウハウ・交渉力を必要です。金融機関としては、通常の返済方法で完済してもらいたいところですが、このまま競売となると債権が全て回収できない可能性があります。任意売却で済むのであれば、債権を全額回収できる可能性が残るのです。したがって、金融機関としては苦渋の選択ではありますが、任意売却には同意するケースが多いようです。
共有者や連帯保証人の同意を得る
任意売却は、担保不動産を売却して住宅ローンの返済に充てることになります。このため、任意売却を行うには、連帯保証人(若しくは連帯債務者)や共有者の同意が必要になります。仮に、全員の同意を得ることができない場合、任意売却を行うことはできません。 例えば、夫婦や親子等で所有者が複数(共有名義)の場合、共有の相手方が連帯保証人(連帯債務者)になります。この場合、売買の売主として所有者全員の同意・協力が必要です。仮に、売主の誰かが亡くなっている場合、相続人全員の同意・協力が必要になります。
尚、連帯保証人(連帯債務者)の有無については住宅ローン契約時の書類や銀行へ確認、共有名義については登記情報で確認できます。
任意売却できないケースとは
ここからは、任意売却できないケースについて解説します。
債権者(金融機関等)が任意売却を認めない
まずは、債権者が任意売却を認めないケースです。金融機関が、任意売却自体を認めていないケースもあります。したがって、このような方針の金融機関から任意売却の同意を得るのは難しいです。任意売却の同意を得られるのであれば、売却完了後の残債が返済できる範囲に納まることなどです。
共有者や連帯保証人が任意売却に同意しない
次に、共有者や連帯保証人全員が任意売却に同意しない場合です。一般的に通常の売却でも、共有者や連帯保証人に同意を得ずに勝手に売却することは、できません。任意売却の場合も同様です。また、これら共有者や連帯保証人は身内であるケースが多いので、同意を得る交渉時には感情的にならず冷静に対処することが必要です。
内覧や情報公開など十分な売却活動ができない
任意売却物件の販売方法は、通常の売却と変わりがありません。広告やインターネットで集客を行い、検討者が内見し購入か否かを判断します。仮に、インターネット上への物件の掲載を拒んだり、住戸内を見せられないといった事情がある場合、販売活動はできません。したがって、このような場合、任意売却はできません。
本人確認ができない
任意売却は一般の売却と同じ方法で行われます。したがって、売買契約に際しては、本人(連帯保証人や共有者がいる場合は全員)自らが売却の意思を示す必要があります。このため、所有者本人が所在不明の状態で、本人確認や本人の意思が確認できないとき、任意売却を実行することはできません。万が一、病気などの理由で出席が困難な場合、司法書士が所有者の元に出向いて本人確認する方法もあります。
任意売却するための実質的な時間がない
任意売却を行うには、販売活動と金融機関の交渉を行う必要があります。まず、金融機関との同意交渉は約1カ月掛かります。また売却を完了するには、少なくとも1か月程度は必要で、概ね引き渡しまでは3か月程度掛かると思ってよいでしょう。また、競売が始まってしまえば任意売却はできません。したがって、余裕をもって任意売却を行うには、競売開始前の少なくとも半年以上前からは動いておかなければなりません。例えば、競売開始1か月前から任意売却で動こうとしても実質的に不可能なのです。
競売との違いは何か
ここからは、任意売却と競売の違いについて解説します。
競売とは
一般的に、債務者が住宅ローンを支払えない状況となり、債権者(保証会社)が債権回収の見通しが立たないと判断した場合、強制的に売却するときの行為が競売です。金融機関は、万が一債務者の支払いが滞った時に抵当権という保険を設定しています。この抵当権を実行することで、裁判所に競売の申し立てができ、裁判所が物件を差し押さえ、強制的に売却するのです。
競売が行われるケース h2
・住宅ローンを滞納したとき
・カードローンや借金の返済ができなくなったとき
・マンションの管理費を滞納したとき
・固定資産税を滞納したとき
まずは、先述のとおりに住宅ローンの滞納です。金融機関からの督促状を再三再四従わずにいると競売が実行されます。次に、カードローン等の滞納時も差し押さえがあります。また、管理費を滞納した場合も、住民と平等を保つために弁護士が競売を申し立てることがあります。最後に、固定資産税を滞納した場合です。この場合は競売ではなく公売となり、行政主導でオークションサイトにて売却します。裁判所が管理する競売とは、手続きのスピードが速いので要注意です。
競売の流れ
1、住宅ローンの滞納
2、督促状での通知
3、期限の利益喪失
4、代弁決済の要求
5、競売の申し立て
6、裁判所執行官による訪問
7、入札開始
8、売却決定・立ち退き
まずは、住宅ローンの滞納です。住宅ローンの滞納が1.2か月であれば銀行からの取り立ては厳しくありませんが、3か月経過すると督促状を送付し請求が厳しくなります。その後、住宅ローン滞納が半年経過すると期限の利益喪失となり、一括返済を請求されます。しかし、殆どの場合一括返済はできないので、銀行は保証会社に一括返済を請求し、代位弁済を行います。その後、保証会社は滞納者に法的手続きの入ることを書面にて伝え、競売の申し立てに入ります。保証会社が競売を申し立てると、裁判所から競売開始決定の通知書が届き、裁判所の執行官と不動産鑑定士が、物件の調査をします。その後、1~2か月後に評価書が作成され落札価格の目安が表記されます。評価が終わると、次は期間入札の通知が届きます。入札期間・開札期日・売却基準価格など具体的な競売の内容を記載したものになります。期間入札の通知が届いた2~3か月後に、購入希望者による入札開始です。落札者が決まると裁判所の審査が行われます。審査の結果、裁判所から購入を許可された落札者は、代金を裁判所に納め、銀行はその代金から住宅ローン分を回収します。代金の支払いが無事に終わると、速やかに立ち退きとなります。
任意売却と競売の違い
ここでは、任意売却と競売の違いについて解説します。
不動産会社か裁判所か
まず、任意売却は債務者と不動産会社が共同で売却活動を行います。競売は裁判所の管理の下、売却を進めていきます。売却は強制的に行われます。
売却価格
任意売却は、相場並みの価格で売却できる可能性があります。また、売却完了後に残った住宅ローンについては、支払い義務がなくなるわけではありません。月々で支払えるローン金額に抑えられるように、金融機関に支払い期間を延ばす交渉を行います。競売の場合は、概ね相場の70%~80%の売却価格になります。売却資金をローン残債に充当しますが、残ったローンについては一括返済が求められます。しかし、当然に支払える能力はないので自己破産手続きをし、支払い義務をなくすのが一般的です。
プライバシー性
任意売却の場合、通常の売却となるので市場に出されて売買されるだけになります。しかし、競売の場合には裁判所の執行官が家に来て調査したり、入札を検討する不動産業者が近所をうろついて近隣住民に状況を調査したりと、プライバシーは害されることがあります。また、入札情報はインターネットや新聞紙上で公開されます。
まとめ
住宅ローンを滞納し、売却額で完済できなければ速やかに任意売却を検討するべきです。任意売却は、住宅ローン滞納3か月目から12か月後位までがリミットであり、売却期間には限りがあります。競売となると売却価格も安くなり強制的に売却となるので、任意売却できる期間に、できるだけ対処するのが賢明となるのです。広島県内での任意売却の相談は、広島不動産にお任せください。